シリンジ交換で悩む新人看護師へ~安全なウォームアップ法と併流更新で、カテコラミン投与も安心に~

「シリンジ交換中に血圧が急に下がってしまった」
「流量調整がうまくいかず、患者さんの状態が不安定になってしまった」

このような経験から、シリンジポンプの交換作業に自信が持てず、悩んでいませんか?

特に、血圧や脈拍など循環に強く作用するカテコラミン製剤を使用する現場では、ほんのわずかな操作ミスが患者さんの命に直結する大問題です。

2013年の研究(J-Stage)でも、シリンジポンプのスタートアップタイムの理解やウォームアップ法の活用が、流量の安定化と循環動態の維持に効果的であるといわれています。
(後で詳しく説明しますね!)

この難しそうな内容を、循環器や救急のICUで多くの患者さんに、薬剤投与やシリンジ交換を行ってきた私の経験とともに、新人さん向けに解説することで、不安を少しでも解消できればと思います。

本記事では、シリンジポンプのスタートアップが必要な理由、併流更新(並行更新)の具体的な方法、さらにはウォームアップ法の詳しい解説まで、わかりやすく丁寧に解説します

この記事を読むことで、シリンジ交換におけるリスクを正しく理解し、安全かつ効率的な交換方法をマスターできるようになります。

結果として、正確な手技と十分な準備により、患者さんの安全を守りながら、ストレスフリーなケアが実現できるはず!

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目次

シリンジポンプについて

まずは、シリンジポンプについて簡単に解説します!

シリンジポンプとは、患者さんへの微量注入を正確に行う医療機器です。

例えば、「1時間に1ml投与する」など少量の点滴が求められる場面で活躍します。

ICUや救急現場では、カテコラミン製剤のような重要な薬剤を扱うため、シリンジポンプの役割は非常に大きいです。

カテコラミンは命に大きく関わるため、シリンジポンプは重要な薬を投与するときに使うんだね!

シリンジ交換の重要性

このカテコラミン製剤のシリンジを交換する際には、少し注意する必要がある点があります。

それは、
シリンジ交換による薬剤投与量の変化をできるだけ少なく交換すること。

カテコラミン製剤は半減期(血中薬物濃度が半減するまでに要する時間)が非常に短く、わずかな投与量の変動で血圧や循環に大きな影響を与えます。

そのため、シリンジ交換時には薬液の移行ができるだけスムーズで、投与量の変化を最小限に抑える必要があります。


従来の交換法では、交換中に薬液供給が一時停止したり、流量が不安定になったりするリスクがあり、現場で悩まれることも多いのです。

シリンジポンプのスタートアップとは

この、安全な薬液の移行をするために、知っておくべきこととして、スタートアップ(タイム)があります。

まずはこのスタートアップ、スタートアップタイムについて説明します。

スタートアップ、スタートアップタイムとは

シリンジを新しいシリンジポンプにセットすると、実際の設定流量に到達するまでに一定の時間が必要です。

(1ml/hで開始しても、初めはその流量で正確には投与されていない)

これを「スタートアップタイム」と呼びます。

この、実際の設定流量に到着するまでの、シリンジポンプが動いている状態をスタートアップと言います。

イメージ
運動をする前に、準備運動をすることで全力を出せますよね。

この準備運動の時間が、スタートアップタイムで、準備運動自体をスタートアップと言う感じ!

なぜスタートアップが必要か

これはいくつか理由がありますが、大きな要因である2つを紹介します!

・機械内部の圧力を調整するため

シリンジ内の薬液が均一に移動するためには、内圧や内筒部のゴムの膨張が安定する必要があります。

摩擦や抵抗の影響を安定させるため

シリンジとポンプの内部機構間に存在する摩擦や抵抗が、流量の安定に影響を与えるため、作動開始直後は流量が変動しやすくなります。

このように、初めのスタートアップの間に、圧力や摩擦、抵抗を調節して流量の安定化をしています!

おまけ

フラッシュ(早送り)をして安定流量を得る場合のフラッシュ量は
20mlシリンジ使用時では2ml
50mlシリンジ使用時で4ml程度であると言われているよ!

従来のシリンジ交換法とその課題

一般的な交換方法はこの2種類だと思います。

ON/OFF法

一度薬液注入を停止し、新シリンジに交換後、再開する方法。

この交換法は交換時、一時的に薬液流量が止まってしまうため、体内への薬液流量の変動による影響が懸念させます。

・プライミング法

新シリンジを早送りボタンでプライミングし、十分に薬液が充填されたことを確認してから接続する方法。

この交換方法は、ON/OFF法よりは薬液注入が止まっている時間は短いですが、スタートアップの影響や看護師の操作法によっては一時的な流量低下が起こる可能性があります。

併流更新とは?

併流更新とは、旧シリンジポンプと新シリンジポンプの両方を同時に作動させ、一時的に併用することで、合計の投与量を一定に保つ方法です。

これにより、スタートアップタイム中の流量変動を補完し、患者さんへの薬液供給が途切れるのを防ぎます。

併流更新のメリット

・薬液の連続供給が可能になり、循環動態の急変リスクを軽減

・交換作業の際の不安定さを解消し、より安全なケアを実現できる

なんか、難しいなあ、、、

そう思った方もいると思うので、具体的な方法を解説します!

具体的な併流更新の方法

併流更新にも、いくつかの方法がありますが、今回は2台同量法で解説します。

今回のシリンジポンプの流量は8ml/hと仮定します。

  1. 準備

    ・旧シリンジポンプと同じ点滴棒に新シリンジポンプを準備します。

    ・新シリンジポンプに点滴をセットし、プライミングを行う。(ここで1ml/hで空回しをするとさらに良し!)

    ・旧シリンジと新シリンジの合計流量が、常に患者さんに必要な投与量と一致するように計画します。

    点滴投与量が合計8ml/hとなるよう、旧シリンジ、新シリンジをどちらも15分間隔で2ml/hずつ変更しよう!とういう感じで計画します。

  2. 段階的な流量調整

    ・新シリンジと旧シリンジのラインを三方活栓で同一ラインにつなぎます。
    (患者さんには2つのシリンジが1つのラインでつながっている状態)

    ・旧シリンジの流量を徐々に減少させながら、新シリンジの流量を同時に上昇させます。

    例:旧シリンジを8ml/hから6ml/h、さらに4ml/hへと下げ、新シリンジは0ml/hから2ml/h、次に4ml/hへと増やし、新シリンジが目標の8ml/hになるまで繰り返す。

  3. モニタリング

    ・交換中は必ず血圧や心拍数などのバイタルサインを継続的に観察し、異常があればすぐに対応できるようにします。

上記手順を踏めば、安全にカテコラミンを交換することができます!

準備段階で新シリンジをプライミング後、交換する30分前から1ml/hで空回し(患者につながずに駆動させる)するとスタートアップも兼ねるためさらに安全ですね!(ウォームアップ法)

ウォームアップ法

私が実際に行っている、ウォームアップ法についてもお伝えします!

ウォームアップ法とは、新シリンジを旧シリンジの交換が必要となる30分~1時間前から、低流量(例:1~8ml/hの範囲内)で作動させる方法です。

これにより、新シリンジのスタートアップタイム中の流量変動をあらかじめ補正し、交換時に安定した流量に達しやすくします。

私の病院で行っているウォームアップ法の具体的な方法

  1. 旧シリンジポンプと同じ点滴棒に新シリンジをあらかじめ作成し、セットする
  2. 新シリンジをプライミングを実施した後、低流量(目的投与量)で運転開始。
  3. 30分~1時間経過してから、旧シリンジと新シリンジのラインをサッとつなぎ変える。

私の病院では、重症でカテコラミン依存が強い患者さんでなければ、一瞬カテコラミン投与量が止まってしまいますが、古いシリンジラインを一度外してから、新しいシリンジへ繋ぎ変えています。

この方法で血圧が下がってしまう場合は、医師と一時的に血圧が上昇するまで、カテコラミン投与量を調節して対応しています。

この方法でも、カテコラミン依存が強い患者さんでなければ、血圧低下となることはそうありません。(私の経験上)

コツとしては、ラインの繋ぎ変え時間を可能な限り素早くサッと行うことです(笑)

本来なら、カテコラミン投与が一度止まってしまうため、厳格な管理をする場合は正確な併流更新をおススメします!

この方法は、施設によって方法が異なるため、自部署で確認してみてください!

安全に実施するための注意点

これらの知識を理解したうえで、安全に実施するために注意すべき点は3つあります!

1 マニュアル確認と研修

各施設で統一された交換ガイドラインの確認をしましょう。

研修があれば、事前にシリンジポンプについて慣れておくといですね。

2 事前準備

シリンジのプライミングや機器の点検、慣れないうちは交換手順のシミュレーションを行いましょう。

3 患者さんの状態確認

シリンジ交換前後での血圧、脈拍、その他のバイタルサインを継続的にモニタリングする。

異常があればすぐに医師や先輩に相談すること!

まとめ

シリンジ交換は患者さんの安全に直結する重要なケアです。

特に、カテコラミン製剤を使用する際は、わずかな流量変動でも大きな影響が出るため、正確な交換が求められます。

そこで重要なのが、スタートアップタイムの理解とウォームアップ法や併流更新の活用です。

シリンジポンプが安定した流量を得るまでには時間が必要であり、ウォームアップ法でその影響を最小限にする。

また、併流更新による段階的な流量調整で、循環動態の急変リスクを低減させる。

少し複雑に見えますが、
本質としてシリンジポンプにはスタートアップが必要なこと、点滴の投与量が一定にする必要があることを理解していれば、これらの行動の意味を理解できると思います!

正しい手順と継続的なモニタリングを徹底し、安心・安全なケアを提供しましょう。

ありがとうございました!

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