急変対応はどんなことをしているの?
急変時にはどんなことを考えているの?
勉強しても実際の現場では動けない、、
このように、「教科書で勉強はしても、実際の急変対応に結びつかない」というような悩みを持っていませんか?
教科書を読んでも、実際には頭が真っ白になるし動けなくなってしまうんだよね、、、
私はこんな感じでした(笑)
急変対応は経験して上手になっていくしかありません。
でも自分が急変現場にいることは、年に数回あるかどうか。
「じゃあ経験がそんなにできないじゃん!」
そう思いますよね。
経験回数は運?次第ですが、経験できなくても急変対応がある程度できるようになる方法があります。
それは、急変対応のイメージをすること。
私はこの方法を先輩から教わりました。
より具体的に急変対応をイメージすることができれば、実際に経験していなくてもある程度は対応できるようになります!
自分でイメージをしたあと、実際の急変対応をすることで、さらに具体的にどう動けばいいか自分の中で整理する。
これをくりかえすことで、自分のイメージ通りの急変対応ができるようになり、その急変対応の精度があがる。
すると、あなたは病棟のヒーローとなれます(笑)
私もこの方法で急変対応を学んでいき、今では高度救命センターの集中治療室で重症患者を対応しています。
この記事では、
私が体験した実際の急変対応を事例として、考えたことや対処したことをまとめました。
あなたが急変対応について、より具体的にイメージできるツールとしてご活用ください。
新人さんでも分かるように、簡単に説明します!
この記事を読んで分かること
・急変対応をイメージできる
・実際のアセスメントや対処法の例を知ることができる
急変対応の考え方は、別の記事でまとめた方法(迅速評価、一次評価、二次評価)に沿って解説していきます。
よかったらこちらもあわせてみていただくとより理解しやすいです。
患者さんの情報
・現病歴
50代男性 既往歴は高血圧のみ。
元々ADLは自立しており認知症もなし。
低左心機能(EF25%)1に伴う心不全、低拍出症候群(LOS症状)2があり緊急入院。
虚血性心疾患3疑いがあり、心不全症状が落ち着けばカテーテル検査を検討していました。
・デバイス
末梢中心静脈カテーテル(PICCトリプル)
末梢ライン2本
・点滴
PICCより
DOB、フロセミド、ヘパリン、アミオダロン
末梢ライン2本はフリー
夜勤での出来事
私はHCUにて勤務を行っていました。
夜中0時
勤務交代となり、申し送りを受けた際には患者さんは覚醒しており穏やかであった。
脈拍や血圧は問題なかったが、呼吸回数が25回/分と早かった。
呼吸がしんどくないか尋ねると、便意があり努責をかけてしまったと。
安静を促すと呼吸が穏やかになった。
朝4時
患者さんが突然起き上がり、頻呼吸をしている。SPO2値がでていない。
パニック様で「背中が痛い!!」と訴えあり。
顔は青白く、手がじっとりしていて冷たい。
身の置き所がない様子で視線が合わず、ベッド上で激しい体動を繰り返している。
どうしたのか分からないけど、とりあえずヤバそう!!
この患者さんに何が起こっていると予想できますか?また、何を観察しますか?
少し患者さんをイメージしながら考えてみてください!
迅速評価
急変時の観察の方法として「迅速評価」があります。
これは、呼吸、循環、意識を中心に、患者に接した数秒間で患者の全体的な状態を観察することです。
難しく書いていますが、要するに
いつもと何か違う
ところがあるかを探します。
では、先ほどの事例をもとに迅速評価をしていきましょう。
呼吸
まずは呼吸の評価をします。
・背中が痛い!
→発語ができており気道は開通している。
・頻呼吸、SPO2値が出ていない
→理由は分からないけど、これはおかしい!
これらのことから、呼吸はいつもと何か違うと感じました。
呼吸状態に問題がありそうだね
循環
次は循環について評価します。
・顔は青白く、手がじっとりしていて冷たい。
→これはいつもと違う、おかしい!
この時点で、私は循環の異常も感じました。
循環も問題がありそう、、、
意識
最後に、意識について評価します。
・身の置き所がない様子で視線が合わず、ベッド上で激しい体動を繰り返している。
→これも普通じゃない、おかしい!
この時点で意識にも問題があると思いました。
意識も問題がある、やばそうじゃん!
迅速評価を終えて
こんな感じで、迅速評価は患者さんと接した数秒で評価します。
呼吸、循環、意識のどれか1つでも異常と評価できる場合は急変の徴候として対応します。
具体的にどうおかしいのかまではわからなくてもいいので、迅速評価で急変なのかどうかを評価しましょう!
上記の患者の場合は、呼吸、循環、意識のすべてに異常が見られました。
そのため、私は急変徴候があると判断しました!
急変の可能性があると判断した場合は、次は何をすべきか分かりますか?
一度考えてみてください!
分かりましたか?
答えは
応援要請と救急カートの依頼です!
新人さんは、急変だ!っと評価が難しいのであれば、すぐに先輩を呼んでください。
急変対応において、応援要請と救急カートの依頼を行うことができれば個人的には100点だと思います。
これだけは必ずできるようになりましょう!
一次評価
迅速評価で急変だと判断した後は、一次評価で具体的にどこが問題なのかを確認して対処します!
一次評価とは、A(気道)→B(呼吸)→C(循環)→D(意識)の順番に観察します。
では、それぞれに問題があるのか、対処を一緒に考えましょう!
A 気道
「背中が痛い!」と発語ができているというこは、気道が開通している証拠です。
気道が閉塞している場合(窒息や舌根沈下)では、声がでません。
そのため、A(気道)は問題なさそうです。
B 呼吸
頻呼吸で、SPO2値が出ていない。
これは明らかに酸素不足で、呼吸回数を増やすことで酸素を取り込もうとしています。
身の置き所がない様子なのもポイントです。
急変時に身の置き所がなく頻回に体勢を変えるのは、少しでも呼吸が楽になる体勢を探しているから。
これは急変徴候の一つです!
また、上記理由で体動が増加するとSPO2値が正確に測れなくなります。
しかし、体動でSPO2が取れていないこともありますが、末梢循環が悪すぎてSPO2が反応しない場合もあります。
「体動があってSPO2がうまく取れないんだよ」
なんて呑気なことは言わないようにしてくださいね!(私は言ってました、、、)
このことから、B(呼吸)に問題がありそうです。
では、呼吸について対処しましょう!
まずは自分で一度考えてみてください。
対処法
まずは低酸素状態を改善しないといけないと思い、バックバルブマスク(BVM)を準備しました。
医師がすぐ到着したのでBVMを揉んでもらい、その間に医師の指示でNPPV(呼吸器)4を準備しました。
このBVMとNPPVにより、患者さんの酸素投与ができ、低酸素を改善させます。
次に、SPO2値が測定できていなかったので、頭で感知するSPO2プローベの変更をすることでSPO2値を出しました。
SPO2値をモニタリングすることで、酸素化の評価をできるようになります!
この後、BVMからNPPVに酸素投与方法を変更したことで医師の手が空いたので、動脈ガス採血、一般採血、レントゲンの指示が出ました。
この採血によって、体内の酸素化や循環、電解質などの異常が無いかを調べます。
レントゲンでは、画像にて問題のある部分が無いかを評価します。
上記内容を行いながら酸素投与をすることで、患者さんのSPO2値が上昇してきました。
しかし、まだ身の置き所はなく痛みの訴えあり。冷や汗も見られます。
そのため、B(呼吸)はクリアとし、次の評価へ移りました!
C 循環
顔は青白く、手がじっとりしていて冷たい。
顔が青白くなるのは、血流が悪く血液が届いていないから。
手がじっとりして冷たいのは、ショックにより汗腺が刺激されるため汗が出ます。
ショックだと、重要臓器に血流を送るため末梢血管をギュッとしめます。
そのため末梢の血流が少なくなり、皮膚の温度が低下し、汗も冷たくなります。
これらは末梢循環不全による症状です。
実際に血圧を測定すると、80台でした。
このことから、C(循環)にも問題がありそうです。
では、C(循環)について対処しましょう!
まずは自分で考えてみてください!
対処法
まず、心機能の低下により強心薬(DOB)を使用していたので、医師にて流量変更を行いました。
これにより、心臓自体の拍出の薬剤でサポートします。
血圧が低いため、ノルアドレナリンを準備し投与開始。
これにより、血圧をコントロールします。
また、血圧測定を自動で行うように設定し、患者さんにマンシェットを巻いておきました。
これで自動的に血圧のモニタリングができます。
上記内容で、いったん循環動態は安定するかどうかを確認します。
ここで、私はこの患者さんの病歴を再度考えました。
この患者さんは心不全と虚血性心疾患の疑いにて入院している。
これだけ状態が悪化しているのは、心不全の悪化と痛みの訴えからも心筋梗塞の可能性があるかも、と考えました!
薬剤にて循環コントロールをできるようにしたことから、一度循環は保留として次のD(意識)の評価を行うことにします。
D 意識
「痛い!!背中が!!!」
患者の痛みは持続しています。
痛みの可能性として、虚血性心疾患の悪化(心筋梗塞)がありました。
この痛みについてが問題であり、他の情報はあまり分かりませんでした。
しかし、このことからD(意識)も問題がありますね!
対処法
痛みに対して、医師よりソセゴンの指示がでました。
ソセゴンは痛みを和らげる点滴です。
これを投与することで、体動が激しかったものが少しだけ落ち着きました。
その後は、意識レベルや麻痺、瞳孔について確認するも異常はなし。
そこで意識はクリアとしました。
その後
このようにA~Dまで評価をしていきました!
ここでまだ問題だったのは、C(循環)が安定していないことでした。
そこで医師より、CTの検査と緊急カテーテルにいくから準備をしてほしいとの依頼。
医師より同意書を取ってもらう間に、ベッド搬送の準備を行い、CTとカテーテル検査へ送りました。
結果
その後、カテーテル室より電話があり、超重症の心筋梗塞が発症しているため、ICUへ移動すると言われました。
カテーテル検査より、#1,99% #2,100% #5,99% #7,90% #12,90%の狭窄あり。
(#〇が冠動脈の番号で、〇%がどれだけ詰まっているかを表しています。)
ステントを#5に入れ、ECMO、インペラ、挿管をしてICUへと移動となりました。
あとで医師から「対応が遅れていたら、命が助からなかった」と言われました。
最後に
私が初めて心筋梗塞を目の前で見た体験でした。
当時は看護師歴2年目であったので、先輩に言われるがまま動いたのを覚えています(笑)
ですが、今となってはすごく貴重な体験だったのであなたにも共有しました!
急変時はこのように、迅速評価をした後、A(気道)~D(意識)の順番に評価して問題を解決していきます。
この事例を通して、急変時のイメージをすることができましたか?
実際には、すごいスピードでこれらを行っているのですが、まずは自分の中で理解して、できることを少しでも実践してみましょう!
前回の記事で、急変時の考え方について詳しく説明しています。
合わせてみてもらうとさらに理解が深まるのでよかったらぜひ読んでみてください!
私も勉強をして、急変時対応がもっとうまくできるようがんばるので、一緒に勉強を頑張りましょう!
ありがとうございました!
- EFとは簡単に言うと、心臓がどれだけ血液を拍出しているかのこと。EFは約50%が正常 ↩︎
- 易疲労感、低血圧、冷や汗、チアノーゼ、乏尿、意識障害など ↩︎
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