【重症患者の栄養管理】心不全患者を中心に栄養管理の方法や考え方をまとめました

重症患者や心不全患者の栄養管理について知りたい

現場での栄養管理はどのように行っているの?

このような方に読んで頂きたい記事です。

どうも、2年目看護師のよんくれです!

この前、院内の循環器担当の栄養士さんから栄養管理について勉強会をしていただきました。

栄養管理は重要であることは知っているのですが、具体的にどうすればいいのかまで分かっていませんでした。

栄養士さんからの話を聞いて、栄養管理についてどのようにアセスメントをすべきか、どんなポイントに注意すべきかを学ぶことができました。その内容をまとめたいと思います!

意外とおろそかになりがちな栄養について、この記事を読んで理解して頂けたらと思います!

この記事を読んで、栄養管理の考え方、実際の栄養管理、問題点への対処法を知ることができます。

目次

なぜ栄養管理が必要か

ICU入室患者の37.8~78.1%が栄養障害を引き起こしていると言われています。

栄養状態が悪いと、

  • ICU在室日数・全入院日数が長く、死亡率も高い
  • 30日以内の再入院率が高い
  • 一般病棟入院患者の約6.5倍ほどの医療費が必要となる

と言われています。

また、栄養状態の低下によって患者の身体にも変化が見られます。

低栄養になると、筋肉のタンパク質を分解するため筋肉量が減ります。またタンパク質の減少に伴い貧血低アルブミン血症となります。これらは、薬物効果を減少させると言われています。

また、免疫機能の低下から(分泌型IgAが低下)気管支肺炎となる。歩行困難のため、導尿やオムツ失禁を繰り返すと尿路感染となる。座位保持が困難だとベッドで寝ている時間が長くなり、褥瘡ができる。これらは易感染治癒力低下と言われています。

そのため、可逆的な栄養不全に陥る前に栄養ケアを行う必要があるのです。

心不全患者の栄養状態

心不全患者は低栄養になりやすいと言われています。

その理由は主に4つあります。

栄養摂取の低下

原因→心不全により倦怠感や呼吸困難、嘔気、腹部膨満、食事制限など

吸収障害

原因→腸管うっ血、肝うっ血、腸内環境の悪化

蛋白同化抵抗性

原因→インスリン抵抗性、交感神経の活性亢進

消費エネルギー増加

原因→息切れによる呼吸促進、交感神経の活性亢進

また、心不全患者はBMIが保たれないと予後が悪くなることも分かっています。

このため、早期から適切な栄養管理が重要となります。

栄養アセスメント

栄養士さんはアセスメントをする際、以下の点を見ているそうです。

  • 病歴(発熱や消化器症状、既往歴など)
  • 身体計測値(BMI、骨格筋量など)
  • 血液検査(アルブミン、トランスサイレチン、総コレステロールなど)
  • 嚥下機能評価

また、普段の体重や食事摂取量、見た目など本人や家族からの情報も参考にしているそうです。

重症患者の栄養アセスメント

重症病態患者では急速に栄養状態が悪化するので、毎日栄養評価を行います。

栄養指標は通常のものを使用しますが、重症病態に陥る前の状態も含め時系列な変化を重視したアセスメントを行います。

重症病態患者では下痢や便秘等の腸管合併症から重症化しやすいので厳格なモニタリングを行う。

静脈経腸栄養ガイドライン第3版(重症病態)より引用

栄養管理のポイント

栄養管理ポイントは大きく4つあります。

①どこから②いつから③どれだけ④なにを

これをそれぞれ解説します。

栄養管理のポイント①どこから

栄養の投与方法は、経口摂取、経管栄養、経静脈栄養の3種類あります。

このなかでも、経口摂取経管栄養は消化管を通して栄養を吸収するため経腸栄養と言われます。

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016や静脈経腸栄養ガイドライン第3版(重症病態)のどちらも経腸栄養を優先することを強く進めています。

経腸栄養が推奨される理由は

  • 免疫機能の維持
  • 感染性合併症の抑制
  • 病院滞在日数の短縮
  • 医療費の削減
  • 水分制限にも対応しやすい など

腸管が使えるなら経腸栄養を選択することが一般的です。

経腸栄養が禁忌となる場合は以下の通りです。

  • 腹膜炎
  • 腸閉塞
  • 難治性嘔吐
  • 麻痺性イレウス
  • 難治性下痢
  • 活動性の消化管出血 など

栄養管理のポイント②いつから

経腸栄養はできるだけ早期に開始することが推奨されています。

重症病態に対する治療を開始した後、可及的に24時間以内、遅くとも48時間以内に経腸栄養を開始することを推奨する。

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016より引用

早期に経腸栄養を開始することで感染性の合併症減少死亡率低下につながります。

しかし、すべてに栄養を開始することが望ましい訳ではなく、早期経腸栄養を控えるべき例もあります。

高用量の昇圧剤、大量輸液、大量輸血が必要な場合など、循環動態不安定な患者に対しては、蘇生されて結構動態が安定するまでは経腸栄養を控えることを弱く推奨する。

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2016より引用

これは、血圧低下、腸管虚血、朝刊壊死のリスクがあるためです。

また、昇圧剤の投与量に明確な基準はありませんが増量時は開始を控えることが一般的です。

「平均血圧が60mmHg以下」が一つの目安とされているそうです。

このため、早期経腸栄養は重要だが、まずは循環動態の安定を確認することが必要です。

栄養管理のポイント③どれだけ

入室1週間で必要エネルギー量の60%以上達成を目標に、25~30Kcal/kg/day程度が目安と言われています。

必要量の60%以上を目標とするのは、多すぎることで高血糖のリスクを避けるため。また腸管粘膜、免疫能の保持を目的とするためです。

(高血糖のリスク:感染、治癒遅延、脱水など)

ちなみに、タンパク質は1.2~2.0g/kg/day程度が目安です。

CRRT施行時はさらに必要量が高まります.(最大2.5g/kg/day)

AKIではタンパク質制限は不要ですが、CKD、BUN高値だと適宜相談が必要です。

栄養管理のポイント④何を

経口摂取の場合は、病態や既往歴、嚥下機能障害の有無などを考慮し食種を選択する。摂取不良なら栄養補助食品を追加する。

経管栄養の場合は、下痢のリスク(腸管浮腫による消火吸収機能低下)や水分制限の必要性などから、

私の病院ではぺプタメンAFをファーストチョイスしています。

ぺプタメンAFは、消化態栄養剤であり、高濃度、高たんぱく質(1.5kcl/ml、Pro9.5g/100ml)。

少量、低速(10ml/hr)から開始し、少しづつ増やしていく。12時間ごとに問題なけれな5ml/hrづつ増加し、30ml/hrに到達したら栄養剤の変更や間歇投与への変更を考慮します。

末梢静脈栄養は、使用期間が短期間の場合に選択されるが、浸透圧比や投与できるエネルギー量に制約があります(静脈炎リスク)。

中心静脈栄養は、使用期間が長い場合(2週間以上)に選択します。

私の病院では、

腎機能障害なしor透析あり→エルネオパ1号20ml/hrより開始。

腎機能障害あり+透析なし(また電解質異常時)→ハイカリック500ml+キドミン400ml+ビタジェクト10ml+ミネラミック2mlを10ml/hrで開始。

上記はあくまで目安です。また、脂肪製剤を併用します。(必須脂肪酸欠乏や脂肪肝の予防)

栄養管理上の問題点への対処法

最後に栄養管理をする上で生じる問題点や、その対処法についてです。

胃胃が多いとき

経腸栄養を投与する前は、胃残を測定しますよね。確かに残っている人も多く見かけます。

調べた結果、以下の通りでした。

一般的に、経腸栄養投与直前の胃内残留量が200ml以上であれば経腸栄養剤の投与を中止または延期することが推奨されている。(静脈経腸栄養ガイドライン第3版)

胃内の体液貯留量が200~500ml/4~6hであれば、消化管蠕動運動促進薬等を使用して経腸栄養をすすめることができるとされている。(日本静脈栄養ガイドライン第3版:重症病態についての記載より)

このように、まだはっきりとしたことが分かっていないのが現状です。

胃残が多いときの対応法として

  • 投与速度を落とす
  • 胃蠕動運動促進薬の使用
  • 幽門後投与を検討する

これらを用いて、できる限り腸管を使用する方法を検討しましょう!

下痢があるとき

下痢がある場合は以下の点を見直します。

  • 経腸栄養剤の種類
  • 栄養剤の投与量と速度
  • チューブ先端の位置
  • 下痢に関連する薬剤を使用していないか

これらを確認しましょう。その後、対応策としては以下の通りです。

  • 投与速度を落とす
  • 間歇投与の場合、持続投与へ変更する
  • PHGG含有の栄養剤(例:アイソカルサポート)に変更する
  • 消化態栄養剤(例:ぺプタメンAF、ぺプタメンS)に変更する など

Refeedin症候群

Refeeding症候群とは、長期低栄養状態患者に栄養が過剰投与されることで生じる有害事象のことです。

低カリウム、低リン、低マグネシウム血症等をきたし、呼吸、循環障害から死に至る例も報告されています。

Refeeding症候群の高リスク患者(英国NICE診療ガイドライン)

下記の基準が1つ該当

  • BMI:16kg/m2未満
  • 過去3~6か月で15%以上の意図しない体重減少
  • 10日間以上の絶食
  • 栄養投与開始前の低カリウム、低リン、低マグネシウム血症

以下の基準が2つ以上該当

  • BMI:18.5kg/m2未満
  • 過去3~6か月で10%以上の意図しない体重減少
  • 5日間以上の絶食
  • アルコール依存の既往または次の薬剤の使用がある(インスリン、化学療法、制酸薬、利尿薬)

Refeeding症候群を予防する方法は以下の通りです。

  • 栄養投与は少量(5~10kcal/kg体重)から始め、4~7日程度かけ徐々に増加する。
  • 十分なビタミン補充(特にビタミンB1)を行う
  • 栄養開始2週間後は電解質、血糖値、水分出納を連日モニタリングする

リスク患者を見つけ、早期の対応が重要です。

まとめ

重症患者は栄養状態が悪化しやすいため、早期から適切な栄養管理が重要です。

栄養投与の基本は腸が使えるなら経腸栄養(経口か経管)を使用します。

重症患者の栄養投与は、なるべく早く開始し、ゆっくり増量しましょう。

循環動態が不安定な場合など経腸栄養の実施が難しい場合は静脈栄養を選択します。

腸蠕動の低下、下痢等に対して適切な対処を行い、可能な限り経腸栄養を継続しましょう。

以上です。

栄養管理は難しいですよね。今回でとても勉強になりました。

また今後も勉強会で学んだことなども共有していくので、よろしくお願いします!

ありがとうございました。

よんくれ

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